オンライン英会話のノートの作り方 — 読み返すノートは、効かない
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毎日レッスンを受けているのに、半年前と話せる内容が変わらない。ノートも作ってみたけれど、書いたきり開いていない。この記事はその状態を抜けるための書き方をまとめたものです。
結論から言うと、見直したほうがいいのはノートの中身より見返し方です。開いて眺める形の復習は、時間をかけたぶんだけ「やった気」になりやすい一方で、記憶に残る量は思い出す形の復習より少ないことが繰り返し報告されています。この記事では、書く量を3つに絞って、見返すときは読まずに思い出す形を勧めます。
もうひとつ、2026年に前提が変わりました。レッスンの録音・録画・文字起こしを本体機能として持つサービスが増えています。書き写す作業そのものが要らなくなったサービスがあるので、まず自分の使っているところがどうかを確かめてください。
読み返すだけの復習は、なぜ効かないのか
外国語の単語学習で、こういう実験があります。いちど正解できた項目について、その後も「読み返し」を続けた群と、「思い出すテスト」を続けた群を比べる。結果は、読み返しを続けても後日の再生には効果が無く、思い出すテストを続けた群には大きな効果が出ました。
一度学習できた後の反復学習は遅延再生に効果を示さなかったが、反復テストは大きな正の効果を生んだ。さらに、学習者自身による成績の予測は、実際の成績とまったく相関していなかった。
後半が重要です。学習者は「自分がどれくらい覚えているか」を正しく予測できていませんでした。ノートを読み返して「覚えた」と感じても、その感覚は当てになりません。覚えたかどうかは、思い出せるかどうかでしか確かめられません。
ここから、ノートの作り方が決まります。あとで思い出せる形で書く。つまり「きっかけ(日本語や状況)だけを見て、英語が言えるか」を試せる形にしておく。英語と日本語を並べて書いて眺めるのは、まさに効かなかったほうのやり方です。
ノートに書くのは3つだけ
レッスンの内容を全部残そうとすると続きません。一度に扱える項目数には限りがあるという前提で、その日のうちに手が届く範囲に絞ります(何項目が上限かは研究によって幅があります)。次のレッスンで実際に使うものだけを書いてください。3行で終わる日があってかまいません。
① 言えなかったこと(最優先)
沈黙した箇所、日本語では浮かんでいたのに英語にできなかった箇所です。その場では日本語のまま書きます。レッスン後に調べて、英語を1つだけ当てはめる。複数の言い方を並べないでください。次に口から出るのは1つなので、1つに決めたほうが使えます。
例を挙げます。「それ、ずっと聞こうと思ってたんです」と言いたくて詰まったとします。調べると I have been meaning to ask you about that. が出てきます。ノートには左に「ずっと聞こうと思ってた」、右に I have been meaning to ask you about that. と書いて、右側を隠せるようにしておく。
この項目を最優先にするのは、言えなかった箇所ほど手がかりが残らないからです。講師が教えてくれた表現は印象に残りますが、自分が言えなかったことは「言えなかった」という感覚しか残らず、次も同じ場所で止まります。自分の発話と、言いたかったことの差に気づく瞬間そのものが学習の入口になる、というのは古くから指摘されてきたことです。
学習者が入力の中で気づいたものが、取り込み(intake)になる。
② 通じなかった単語
講師が聞き返した箇所、言い直しを求められた箇所を、単語単位で書きます。文ごと書かないでください。通じなかった原因が1語か2語に絞れることは多く、絞れたときのほうが次に練習するものがはっきりします。文で書くと、どこを直せばいいのか分からなくなります。
日本語話者がつまずきやすいのは、音そのものより強勢の位置であることが多いです。allergy をアレルギーの調子で言うと通じませんが、最初の音節を強く短く言えば通じます。ノートには「allergy(アレルギーではない/最初を強く)」のように、直し方まで1行で書いておく。
録音や文字起こしが残るサービスなら、この項目はレッスン中に書かなくていいです。あとで聞き直したほうが、相手がどこで止まったかは正確に分かります。
③ 前回と同じ間違い
毎回ちがう間違いは、その場で直せば済みます。放っておくと固まってしまうのは、何度も同じ形で出るものです。三単現の s が落ちる、冠詞が抜ける、過去の話なのに現在形になる。人によってだいたい2つか3つに決まっています。
この「固まってしまう」現象には名前がついていて、中間言語の発達が途中で止まり誤った形が定着することを化石化(fossilization)と呼びます。中級で伸び悩む理由のひとつがこれです。定着してしまった形は、話す量を増やすだけでは戻りにくく、言い直しを聞くだけでも戻りにくいことが報告されています(何が効くかは §「レッスン中にやること」)。
だからノートは、1レッスン1ページで区切らないほうがいい。同じ項目を1か所に積むと、同じ間違いが2回目に出た瞬間に気づけます。3回目が出たら、その1つだけを次のレッスンのテーマにしてください。
ノートのテンプレート(右側を隠して書く)
3項目それぞれを、右側を隠せる形で書きます。紙なら中央に線を引くだけ、アプリなら2列の表にして右列を折りたためるようにするだけです。実際に書くとこうなります。
| 項目 | 左(きっかけ・ここだけ見る) | 右(隠す) | 印 |
|---|---|---|---|
| ① 言えなかった | ずっと聞こうと思ってた | I have been meaning to ask you about that. | 8/19 |
| ① 言えなかった | (渋滞で)動かなかった | The traffic was at a standstill. | 8/19 |
| ② 通じなかった | allergy | 最初の音節を強く短く。アレルギーの調子で言うと通じない | 8/19 ×2 |
| ③ 同じ間違い | He ___ to submit it by Friday.(彼は) | has(have と言ってしまう。三単現) | 8/12・8/16・8/19 ←3回目 |
| ③ 同じ間違い | 昨日、駅で友達に会った | I met a friend at the station.(meet と言ってしまう) | 8/15・8/19 |
印の欄に日付を足していくのがこのテンプレートの肝です。③に日付が3つ並んだら、そこを重点的に扱う合図にしてください(3回というのは研究の基準ではなく、続けやすさから決めた目安です)。①と②は、言えた日に線を引いて消していきます。
きれいに書く必要はまったくありません。自分が読めれば字は汚くていい。まとめ直す時間があるなら、その時間で1回思い出したほうが残ります。
いつ見返すか — 間隔をあけて、思い出す
見返す間隔には研究の蓄積があります。第二言語学習について48の実験(のべ3,411人)をまとめたメタ分析では、間隔をあけた練習は中程度から大きい効果を示しました。さらに、短い間隔と長い間隔は直後のテストでは同等でも、時間をおいたテストでは長い間隔のほうが効果的でした。
| いつ | 何をするか | かかる時間 |
|---|---|---|
| レッスン直後 | 3項目を書く。①は英語を調べて1つに決める | 5分 |
| 翌日 | 左だけ見て、右を声に出して言う。言えたものに線を引く | 3分 |
| 3日後 | 同じく左だけ見て言う。言えなかったものだけ残る | 3分 |
| 1週間後 | 残ったものを言う。③に日付が3つ並んだ項目を次のレッスンのテーマにする | 5分 |
合計で週に15分ほどです。まとまった復習時間を別に取ろうとすると、まず取れません。次のレッスンを開く前に前回のページを開く、と決めてしまうのがいちばん確実です。
このとき、右側を見てから「ああそうだった」と思うのは読み返しです。思い出す形より残りにくいので、先に声に出してください。言えなくてもかまいません。思い出そうとすること自体が、読み返すより記憶に残りやすいと報告されています。
レッスン中にやること(メモは取らない)
メモを取っている間、あなたは話していません。25分のうち3分をメモに使うと、話す量が1割以上減ります。記録が残るサービスなら、レッスン中に書く理由はほとんどありません。代わりに、その場でしかできない2つをやってください。
1つめは、講師にチャットへ書いてもらうこと。言い直された表現は、聞いただけだと後から再現できません。Could you type that in the chat box? と言えば、たいていその場で書いてくれます。レッスン後にそれを見ながらノートに移せば、聞き取りの誤りが混ざりません。
2つめは、直された理由を聞くことです。Why is that better than what I said? と聞くと、単に言い直してもらうより残ります。教室での口頭フィードバックを比べたメタ分析では、正しい形をそのまま言い直して聞かせる型(recast)より、学習者自身に直させたり、なぜそうなるかを説明する型のほうが効果が大きいことが示されています。固まってしまった形ほど、言い直しを聞くだけでは剥がれません。
録音や文字起こしが残るなら、書き写さなくていい
ここが最近いちばん動いたところです。以前は「レッスンは受けたら終わり」で、見返したければ自分で録音するしかありませんでした。いまは録音・録画・文字起こしをサービス側が持っていることが増えています。自分の使っているサービスに何が残るかを、まず確認してください。残っているなら、聞き取れなかった箇所を手で書き写す必要はありません。
残る形(音声か、映像か、読める文字か)と残る期間はサービスごとに違います。1週間で見返す習慣なら短くても足りますが、月末にまとめて振り返るなら短い保存期間では消えています。何がどれだけ残るかは、使っているサービスのヘルプかFAQに書かれているので、一度だけ確かめておいてください。サービス側に何も残らない場合は、ブラウザの拡張機能で自分の側に録音を残すこともできます。
なお、自分で録音してよいかどうかは規約で決まります。公式の録音・録画を用意している一方で、利用者が自分で録音することは禁止しているサービスがあります。録り始める前に、使っているサービスの利用規約を読んでください。公式に用意された機能を規約の範囲で使うぶんには問題になりません。
ただし、記録が残ることと、次に使う表現が決まることは別です。60分の録音も、読める文字起こしも、そのままでは見返す対象が多すぎます。この記事の3項目は、残った記録から「次のレッスンで使う3つ」を抜き出すための形です。
それでも続かないとき(3つの原因と、戻し方)
続かない理由はだいたい3つで、対処もそれぞれ決まっています。
- 書く量が多すぎる → 3項目に戻す。1項目1行、1日3行で十分
- 見返す機会が無い → 復習の時間を別に取ろうとしない。次のレッスンを開く前に前回のページを開く
- 効果が実感できない → ①に線を引いた数を数える。1か月で20本引けていれば、20の表現が言えるようになっている
まとめ — 明日のレッスンからやること
- 書くのは3つだけ — 言えなかったこと / 通じなかった単語 / 前回と同じ間違い
- 右側を隠せる形で書く。読み返すのではなく、先に声に出して思い出す
- 翌日・3日後・1週間後に、左だけ見て言う。合計で週15分
- ③に日付が3つ並んだ項目が、いまの化石化ポイント。それを次のレッスンのテーマにする
- レッスン中はメモを取らない。代わりに Could you type that in the chat box? と Why is that better than what I said? を使う
- 録音・録画・文字起こしを本体機能として持つサービスが増えている。まず自分のサービスに何が残るかを確かめる
- きれいに書かない。まとめ直す時間があるなら、1回思い出したほうが残る
出典
この記事の出典は、すべて実際にページを開いて確認したものです。ページの内容は変わるので、確認した日付を併記しています。
出典: Karpicke & Roediger (2008) The Critical Importance of Retrieval for Learning, Science 319(2026-08-19 時点) / Schmidt (1990) The Role of Consciousness in Second Language Learning, Applied Linguistics 11(2)(2026-08-19 時点) / Selinker (1972) Interlanguage, IRAL 10(1-4)(2026-08-19 時点) / Kim & Webb (2022) The Effects of Spaced Practice on Second Language Learning: A Meta-Analysis, Language Learning(2026-08-19 時点) / Lyster & Saito (2010) Oral Feedback in Classroom SLA: A Meta-Analysis, Studies in Second Language Acquisition 32(2)(2026-08-19 時点)
よくある質問
- ノートは手書きとアプリ、どちらがいいですか?
- 右側を隠せるなら、どちらでも変わりません。紙なら中央に線を引いて、右を手やふせんで隠します。アプリなら Google スプレッドシート や Excel で2列の表を作って右の列を非表示にする、Notion なら2列のテーブルにしてトグルで折りたたむ、というやり方が手軽です。選ぶ基準は「レッスン直後に開けるか」。ただし3か月ほど続けると「あの表現どこに書いたか」が必ず起きるので、検索できるほうが後で楽になります。
- レッスン中にメモを取ったほうがいいですか?
- 取らないほうがいいです。メモを取っている間は話していないので、話す量が減ります。代わりに、直された表現は Could you type that in the chat box? と頼んでチャットに書いてもらってください。録音や文字起こしが本体機能として残るサービスなら、なおさら書く理由がありません。
- 文字起こしや録画が残るなら、ノートは要りませんか?
- 要ります。記録があることと、思い出せることは別だからです。文字起こしは25分ぶんの全文なので、読み返すだけでは「読み返し」にしかなりません。ノートの役割は、その中から次に使う3つを選んで、思い出せる形に置き直すことです。書き写す手間が消えたぶん、選ぶことに時間を使えます。
- 毎回ノートを書かないと意味がないですか?
- 毎回でなくて大丈夫です。書けなかった日をあとから埋めようとすると、その負担が理由で続かなくなります。3行で終わる日があっていいですし、書かない日があってもかまいません。毎回やってほしいのは1つだけで、次のレッスンを開く前に前回のページを開くことです。
- 予習はどこまでやればいいですか?
- 教材を読んで、使いたい表現を3つ選ぶところまでで止めてください。読み込みすぎるとレッスンが答え合わせになって、いちばん大事な「言えなかったこと」が出てこなくなります。選んだ3つが使えたかどうかを、レッスン後に丸かバツで書き足すと、次に選ぶ3つが変わっていきます。

Sho
TAKE A 株式会社の代表。英語の教員免許を持ち、これまで20以上のオンライン英会話サービスを使い、通算1,000回以上のレッスンを受けてきました。いまはレッスンの録音をAIが分析する SpeakCoach を作っています。
